バーチャルオフィスで許認可が取れない業種は?事務所要件を法令で確認
結論:法令や許可基準で「事務所」「事業所」「営業所」の実体を求める業種は、バーチャルオフィスの住所だけでは許認可が取れないことがあります。
代表例は宅地建物取引業(事務所の形態)、労働者派遣事業(事業所 おおむね20㎡以上)、税理士など事務所の設置義務がある士業、営業所を届け出る古物商です。
次にやること:自分の業種の許認可が要るかを確認し、要る場合は申込前に所管の窓口へ「バーチャルオフィスの住所で申請できるか」を問い合わせます。
なぜバーチャルオフィスだと許認可が取れないことがある?
バーチャルオフィスは、住所の利用・郵便物の受け取り・電話の取り次ぎなどを提供するサービスで、自分専用の作業スペースは基本的にありません。一方、いくつかの業種では、法律や許可基準が「事務所」「事業所」「営業所」に一定の実体を求めています。この「実体」の条件を、住所だけのバーチャルオフィスでは満たしにくいのです。
法人登記はバーチャルオフィスの住所でもできますが(法人登記の記事)、許認可はそれとは別の審査です。登記ができたからといって、許可が取れるとは限りません。
宅地建物取引業(宅建業)は?
宅地建物取引業法第3条第1項は、宅地建物取引業を営もうとする者は、2以上の都道府県に事務所を設置する場合は国土交通大臣、1の都道府県の区域内にのみ事務所を設置する場合は都道府県知事の免許を受けなければならない、と定めています(免許の有効期間は同条第2項で5年)。
ここでいう「事務所」は、宅地建物取引業法施行令第1条の2で、本店・支店(第1号)と、「継続的に業務を行なうことができる施設」を有する場所で契約締結権限を有する使用人を置くもの(第2号)、とされています。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和7年4月1日施行版)は、第2号の施設を、宅地建物取引業者の営業活動の場所として継続して使用でき、社会通念上「事務所」と認識される程度の形態を備えたもの、と説明しています。
この説明は第2号の施設についてのものですが、本店として登記した住所であっても、免許の審査では事務所としての使用実態や形態を申請先が確認します。住所と郵便受けだけを借りるバーチャルオフィスは、事務所としての形態を備えているとは言いにくいと考えられます。宅建業を始めるなら、免許の申請先(都道府県など)に事務所の要件を確認したうえで、独立した個室のあるレンタルオフィスや賃貸事務所を検討します。
労働者派遣事業・職業紹介事業は?
厚生労働省の「労働者派遣事業関係業務取扱要領」(令和8年10月1日適用版の掲載ページから確認)は、許可要件のうち事業所に関する判断として「事業に使用し得る面積がおおむね 20 ㎡以上あるほか、その位置、設備等からみて、労働者派遣事業を行うのに適切であること」と定めています(第3の1(8)ニ(ハ)。2026-11-01確認)。作業スペースのないバーチャルオフィスでは、この基準を満たせません。
有料職業紹介事業にも許可制度があり、事業所についての基準があります。基準の内容は改正されることがあるため、申請前に管轄の労働局で最新の許可基準を確認してください。許可を受けた事業者の情報は、厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で検索できます。
税理士・弁護士などの士業は?
税理士法第40条は、税理士・税理士法人に税理士業務を行うための事務所の設置を義務づけ(第1項)、その名称を税理士事務所とし(第2項)、税理士は税理士事務所を2以上設けてはならない(第3項)と定めています。
ほかの士業も、それぞれの法律や所属団体の会則で事務所について定めていることが多く、バーチャルオフィスを事務所として届け出られるかは、所属する士業団体の判断になります。登録・開業の前に、必ず所属予定の会に確認してください。
古物商は?
古物営業法第5条第1項第2号は、古物営業の許可申請書に「主たる営業所又は古物市場その他の営業所又は古物市場の名称及び所在地」を記載すると定めています。許可は都道府県公安委員会が行い(第3条)、申請の窓口は営業所を管轄する警察署です。ネットだけで古物を売買する場合も、許可申請書には営業所の名称と所在地を書き(第5条第1項第2号)、営業所ごとに管理者を選任します(第13条第1項。管理者の氏名と住所も申請書の記載事項=第5条第1項第4号)。バーチャルオフィスの住所を営業所にできるかは、申請前に管轄の警察署に確認します。
業種別に見るとどうなる?
| 業種 | 根拠 | バーチャルオフィスで | 確認先 |
|---|---|---|---|
| 宅地建物取引業 | 宅建業法第3条・施行令第1条の2 | 難しいと考えられる | 都道府県の宅建業担当 |
| 労働者派遣事業 | 許可基準(事業所 おおむね20㎡以上) | 基準を満たせない | 管轄の労働局 |
| 有料職業紹介事業 | 許可基準 | 最新の基準を要確認 | 管轄の労働局 |
| 税理士 | 税理士法第40条(事務所の設置) | 税理士会に要確認 | 所属税理士会 |
| ほかの士業 | 各士業法・会則 | 各会に要確認 | 所属する士業団体 |
| 古物商 | 古物営業法第5条(営業所) | 警察署に要確認 | 管轄の警察署 |
| Web制作・コンサル・ネットショップ | 許認可なし(特商法の表示は必要) | 使われることが多い | — |
この表は法令の条文と公的資料から「確認が必要な業種」を並べたもので、個別の可否を決めるものではありません。
許認可が必要なら、どこを借りる?
事務所の実体が求められる業種では、次のような選択肢を比べます。
- レンタルオフィス(個室):自分専用の個室があり、施錠できるものが多い。許認可に使えるかは物件と所管次第。
- コワーキングスペース:共用の席が中心。許認可の事務所としては認められにくい場合が多いため、個室プランの有無を確認。
- 賃貸事務所:敷金・内装などの初期費用は大きいが、許認可の要件を満たしやすい。
費用の比較はレンタルオフィス・コワーキングとの違いの記事にまとめています。
許認可が不要な業種でバーチャルオフィスを使うなら?
許認可の要らない業種なら、バーチャルオフィスは本店所在地・特商法の表示・名刺の住所として使えます。郵便の量と転送頻度で1年目の費用が変わるので、計算ツールで比べてから選びましょう。
申請前に窓口へ何を聞けばいい?
許認可の要否と事務所の要件は、業種と地域で扱いが違うことがあります。窓口に問い合わせるときは、次の点を伝えると答えがはっきりします。
- 予定している事業の内容(取り扱う商品・サービス、取引の相手)
- 予定している事務所の形態(住所だけのバーチャルオフィス、コワーキングの共用席、レンタルオフィスの個室など)
- 個室の場合は、広さ・施錠の可否・ほかの事業者との区切り
- 事務所に常駐する人の有無
窓口の回答を受けてから契約すれば、許可が取れずに本店を移すような二度手間を避けられます。
許認可が要らない業種でも注意することは?
許認可の要らない業種でも、取引先との契約で「事務所の所在地」を確認されることがあります。また、銀行口座の審査では事業の実態が見られます(法人口座の記事)。バーチャルオフィスで事業をすることを前提に、取引先や銀行に説明できるよう、事業計画書やサービス紹介のページを用意しておきましょう。
自分の条件(登記・特商法・郵便の量・電話・会議室・エリア)での1年目の総額は、トップの計算ツールで出せます。入力内容は送信されません。
よくある質問
- バーチャルオフィスで宅建業の免許は取れる?
- 難しいと考えられます。宅建業法の免許は事務所ごとに受けるもので、国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、事務所の「継続的に業務を行なうことができる施設」を、営業活動の場所として継続して使用でき、社会通念上事務所と認識される程度の形態を備えたものとしています。住所だけを借りるバーチャルオフィスはこれに当たりにくいため、申請先の都道府県などに確認してください。
- 人材派遣業はバーチャルオフィスで許可が取れる?
- 厚生労働省の「労働者派遣事業関係業務取扱要領」では、許可要件として事業所の「事業に使用し得る面積がおおむね20㎡以上」あることが求められています。作業スペースを持たないバーチャルオフィスでは満たせないため、レンタルオフィスなどを検討します。
- 税理士はバーチャルオフィスを事務所にできる?
- 税理士法第40条は、税理士に税理士業務を行うための事務所の設置を義務づけ、2以上の事務所を設けることを禁じています。事務所としての実体の考え方は、所属する税理士会に確認してください。
- 許認可が要らない業種なら問題ない?
- Web制作・コンサルティング・ネットショップなど、事務所の実体を許可の条件にしていない業種では、バーチャルオフィスを本店や特商法の表示に使う例が一般的です。ただし銀行口座の審査は別にあります。
出典・確認した一次情報
- e-Gov 法令検索 宅地建物取引業法(第3条):https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
- e-Gov 法令検索 宅地建物取引業法施行令(第1条の2):https://laws.e-gov.go.jp/law/339CO0000000383
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(令和7年4月1日施行版):https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001855526.pdf
- 厚生労働省 労働者派遣事業関係業務取扱要領(掲載ページ):https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/haken-shoukai/hakenyouryou_00003.html
- 厚生労働省 労働者派遣事業関係業務取扱要領 第3(許可要件):https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001496939.pdf
- e-Gov 法令検索 税理士法(第40条):https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237
- e-Gov 法令検索 古物営業法(第3条・第5条・第13条):https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000108
- 厚生労働省 人材サービス総合サイト:https://jinzai.hellowork.mhlw.go.jp/