開業届の住所はバーチャルオフィスでいい?納税地と事業所の違い
結論:開業届の納税地は原則として自宅(住所地)を書き、バーチャルオフィスの住所は「事業所」や屋号の住所として使うのが基本です。
所得税法第16条には事業場等の所在地を納税地にできる特例がありますが、バーチャルオフィスが事業場等にあたるかは税務署の判断になります。
次にやること:開業届を出す前に、名刺・請求書・サイトに載せる住所をバーチャルオフィスに決め、税務署からの郵便を受け取れるプランか確認します。
開業届には何を書く?
個人で事業を始めたときは、「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を税務署に出します。国税庁の手続き案内では、提出先は納税地を所轄する税務署長で、事務所・事業所の所在地が納税地と異なっていても、ほかの税務署長への提出は不要とされています。e-Taxでも書面でも提出でき、e-Taxなら本人確認書類の提示や写しの添付は不要です。
提出期限は、所得税法第229条で「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限まで」とされ、国税庁の手続き案内も「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください」としています(期限が土日祝日なら翌日。2026-11-01確認)。以前は「開業の日から1か月以内」と案内されていたため、古い解説の期限とは異なる点に注意してください。なお、青色申告承認申請書など別の届出には別の期限があります。
開業届には、納税地、それ以外の住所地・事業所等、氏名、職業、屋号、開業日などを書きます。バーチャルオフィスの住所をどの欄に書くかがポイントです。
納税地はどこになる?
所得税法第15条は、国内に住所がある人の納税地を「その住所地」と定めています(第1項第1号)。つまり、普通は自宅の住所が納税地です。
一方、第16条第2項は、国内に住所または居所があり、住所地・居所地以外に事業を営む事業場等がある人は、住所地・居所地に代えて、その事業場等の所在地を納税地にできると定めています(複数ある場合は主たるもの)。
バーチャルオフィスは住所の利用と郵便の受け取りが中心で、作業をする場所ではないことが多いため、「事業を営む事業場等」として納税地にできるかは慎重に考える必要があります。迷ったら、自宅を納税地にして、バーチャルオフィスは事業所の欄や屋号の住所として扱うのが無難です。どうしてもバーチャルオフィスを納税地にしたい場合は、所轄の税務署に相談してください。
バーチャルオフィスの住所はどこに使う?
| 使う場所 | バーチャルオフィスの住所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 開業届の納税地 | 原則として自宅(住所地) | 特例は税務署に確認 |
| 開業届の事業所等の欄 | 書くことを検討できる | 実態に合わせて記載 |
| 名刺・請求書・見積書 | 使える | 正式な住所表記で |
| ホームページ・SNS | 使える | — |
| ネットショップの特商法表示 | 条件つきで使える | 消費者庁Q&Aの3条件(解説) |
| 銀行口座(屋号つき口座など) | 銀行の判断 | 本人確認書類の住所と照合される |
自宅住所を公開しないための組み合わせは?
個人事業主がバーチャルオフィスを使う一番の理由は、自宅の住所を取引先や顧客に公開しないことです。
- 税務署への届出(納税地)は自宅のまま
- 名刺・請求書・サイトはバーチャルオフィスの住所
- ネットショップの特商法表示は、消費者庁Q&Aの条件を満たすバーチャルオフィスの住所、または「請求があれば遅滞なく開示」の表示
この組み合わせなら、税務の手続きと住所の公開を分けられます。ネットショップの場合の詳しい手順は自宅住所を公開しないネットショップの記事にまとめています。
個人事業主向けのプランはいくら?
法人登記をしない個人事業主なら、登記不可でも安いプランを選べる場合があります。例えば、DMMバーチャルオフィスのミニマムプラン(年間契約で月660円)は、一般の郵便物(取引先・銀行などからの郵便)を受け取れず、受取は返品・返送品と、国・都道府県から届く個人事業主の税金関連書類のみです。住所の表示が主な目的で、郵便がほとんど届かない場合に向くプランです。GMOオフィスサポートの転送なしプラン(現行660円、2027年1月上旬予定の改定後990円)は郵便物の受け取りがありません。
税務署・市区町村・年金事務所からの書類が届く住所として使うなら、郵便物を受け取って転送してもらえるプランを選びます。法人登記なし・特商法表示あり・郵便 月3通・月1回転送の場合の計算例は次のとおりです。
| 順位 | 会社・プラン | 1年目の総額 | 2年目以降の年額 | 注意 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | レゾナンス バーチャルオフィスコース | 20,980円 | 15,480円 | 支払いサイクル(月払い/年払い)は公式で要確認/税込・税別の表示なし(表示額で計算)/1年払い+週1回転送は入会金0円のキャンペーン中と記載(計算は入会金5,500円を含む) |
| 2 | バーチャルオフィス1 ワンプラン(年間契約・一括10,560円) | 21,460円 | 15,960円 | — |
| 3 | GMOオフィスサポート 月1転送プラン | 34,320円 | 34,320円 | 特商法の住所表示に使えるかは公式で要確認/支払いサイクル(月払い/年払い)は公式で要確認 |
| 4 | NAWABARI ネットショップ運営プラン(月契約・一括13,200円も同額) | 36,700円 | 31,200円 | 想定利用者はネットショップ運営者・インフルエンサー・私書箱利用者/転送料はレターパックライト500円(250g以内)/プラス630円で計算(郵便転送ページの記載)/料金ページは『法人登記』を含むと記載、よくある質問は『ビジネスプランをご契約いただければ登記可能』と記載(食い違い)。登記に使うなら申込前に確認 |
| 5 | ワンストップビジネスセンター エコノミープラン(銀行振込・年払い=1か月分無料) | 68,860円 | 58,080円 | 特商法の住所表示に使えるかは公式で要確認/年額58,080円(公式の計算例) |
| 6 | METS OFFICE ネットショッププラン(最低利用12か月)+未公表の費用 | 10,450円 | 6,600円 | 即時転送のみ(郵便物ごとに転送)/転送料の金額が公式ページに記載なし(計算に含まず)/法人登記不可。郵便は自動で即時転送(転送料はプランページに記載なし) |
| 7 | 和文化推進協会(京都朱雀スタジオ) 朱雀なえもんプラン(年間6,000円・税別)+未公表の費用 | 26,400円 | 26,400円 | 特商法の住所表示に使えるかは公式で要確認/転送1回の手数料のみ計算(郵送実費は含まず)/入会金・初期費用は要確認(計算に含まず)/転送料は500円(税別)+郵送実費。実費分は計算に含まず |
| 8 | デジラボ 年払いコース(一括26,400円)+未公表の費用 | 29,700円 | 26,400円 | 特商法の住所表示に使えるかは公式で要確認/転送頻度は公式で要確認/転送料の金額が公式ページに記載なし(計算に含まず)/初期費用はページ内に3,300円と2,200円の2つの記載があり、高いほう(3,300円)で計算 |
| 9 | DMMバーチャルオフィス ベーシックプラン(年間契約・一括前払い)+未公表の費用 | 34,320円 | 34,320円 | 特商法の住所表示に使えるかは公式で要確認/入会金・初期費用は要確認(計算に含まず)/月額は『2,530円〜』表示/入会金は料金ページで確認できず/ミニマムは一般の郵便物を受け取れない(返品・返送と個人事業主の税金書類のみ)ため、ミニマムは候補外 |
| 10 | ナレッジソサエティ バーチャルオフィスメンバー+未公表の費用 | 59,400円 | 59,400円 | 特商法の住所表示に使えるかは公式で要確認/支払いサイクル(月払い/年払い)は公式で要確認/転送頻度は公式で要確認/転送料の金額が公式ページに記載なし(計算に含まず)/入会金・初期費用は要確認(計算に含まず)/税込・税別の表示なし(表示額で計算)/月額は『4,950円〜』表示 |
| 11 | Karigo(カリゴ) ホワイトプラン+未公表の費用 | 61,900円 | 56,400円 | 特商法の住所表示に使えるかは公式で要確認/支払いサイクル(月払い/年払い)は公式で要確認/転送頻度は公式で要確認/転送料の金額が公式ページに記載なし(計算に含まず)/月額4,700円〜・入会金5,500円〜(店舗により異なる) |
開業後に法人化したら住所はどうなる?
個人事業から法人にするときは、会社の本店所在地を決めて登記します。個人で契約していたバーチャルオフィスを、法人名義に切り替えられるか、法人登記に使えるプランへの変更が必要かを確認しておきましょう。METS OFFICE には、12か月以内に法人化する個人向けの「会社設立サポート」プラン(月額0〜770円・法人設立日まで最大12か月のフリーレント、期間終了後はビジネスプラス月1転送コミへ自動移行)があります(会社設立の記事)。
開業届を出す前のチェックリストは?
- 納税地(原則は自宅)と、バーチャルオフィスの住所を書く欄を決める
- バーチャルオフィスの正式な住所表記を確認する
- 税務署からの郵便を受け取れるプランか確認する
- 屋号で口座を作る場合は、銀行が求める住所の書類を確認する
- 青色申告にするなら、青色申告承認申請書の期限も確認する
開業届以外に住所を書く書類は?
個人事業を始めると、開業届のほかにもさまざまな書類に住所を書きます。どこに自宅を書き、どこにバーチャルオフィスを書くかを整理しておくと迷いません。
- 青色申告承認申請書:開業届と同じく納税地を書く書類です。
- 都道府県・市区町村への事業開始の届出:自治体ごとに様式と提出先が違います。
- 取引先への請求書・見積書:バーチャルオフィスの住所を使えます。
- ネットショップの特商法表示:条件つきでバーチャルオフィスの住所を使えます。
- 銀行・決済サービス:本人確認書類と照合されるため、自宅住所の登録を求められることがあります。
税務・行政への届出は自宅、取引先や顧客に見せる場面はバーチャルオフィス、と分けて考えると整理しやすくなります。
バーチャルオフィスを納税地にしたいときは?
所得税法第16条第2項の特例を使えるのは、住所地以外に「事業を営む事業場等」がある場合です。住所の利用と郵便の受け取りだけのバーチャルオフィスがこれにあたるかどうかは、実際にそこで事業を行っているかなど事実関係によるため、所轄の税務署に相談してから判断してください。
住所を分けるときの注意点は?
納税地は自宅、事業の住所はバーチャルオフィス、と分けると、税務署からの郵便は自宅に届き、取引先からの郵便はバーチャルオフィスに届きます。郵便の届き先が2か所になるため、次の点に注意します。
- 取引先に、請求書や契約書の送り先をバーチャルオフィスの住所で伝える
- 税務署・自治体の通知は自宅に届くので、事業用と混ざらないように管理する
- バーチャルオフィスの転送頻度は、取引先からの書類の量に合わせる
自分の条件(登記・特商法・郵便の量・電話・会議室・エリア)での1年目の総額は、トップの計算ツールで出せます。入力内容は送信されません。
よくある質問
- 開業届の納税地にバーチャルオフィスの住所を書いていい?
- 所得税法第15条では、国内に住所がある人の納税地は住所地です。第16条第2項で、住所地以外に事業場等があれば、その所在地を納税地にできる特例がありますが、バーチャルオフィスが「事業を営む事業場等」にあたるかは税務署に確認してください。一般的には納税地は自宅(住所地)にし、バーチャルオフィスは事業所の住所として扱います。
- 開業届を出す税務署はどこ?
- 国税庁の案内では、提出先は納税地を所轄する税務署長です。事務所・事業所の所在地が納税地と異なっていても、ほかの税務署長への提出は不要とされています。
- 開業届の提出期限はいつ?
- 所得税法第229条と国税庁の手続き案内では、事業を開始した日の属する年分の確定申告期限までです(2026-11-01確認)。以前の「開業から1か月以内」とは異なります。
- 開業届はオンラインで出せる?
- 国税庁の案内では、e-Taxで提出できます。e-Taxで提出する場合は本人確認書類の提示や写しの添付は不要とされています。
- 開業届を出す前にバーチャルオフィスを契約する?
- 名刺・サイト・請求書にバーチャルオフィスの住所を使うなら、開業の準備段階で契約しておくとスムーズです。個人事業主向けに転送なしの安いプランもありますが、税務署からの郵便を受け取れるかを確認してください。
出典・確認した一次情報
- e-Gov 法令検索 所得税法(第15条・第16条・第229条):https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
- 国税庁 個人事業の開業届出・廃業届出等手続:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
- 国税庁 個人事業の開業・廃業等届出書(様式):https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/pdf/r06/05.pdf
- 消費者庁 特定商取引法ガイド 通信販売 広告規制:https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/advertising.html
- DMMバーチャルオフィス 料金:https://virtualoffice.dmm.com/price